院長の糖尿病ノート

7月2017

インスリンは一度始めると一生やめられない?

2017.07.26

インスリンが体内で作られない1型糖尿病の人は、生命を維持するためにインスリン注射の継続が必要です。また、2型糖尿病でも経口薬でもコントロールが不十分な場合や、肝臓・腎臓の働きが悪い場合、手術前後、妊娠中などではインスリン注射が必要となります。

 

インスリン注射を始めると、膵臓が怠けてインスリンがもう出なくなるのでは?と心配される方もいますが、実際は正反対です。

高血糖が続くと、膵臓は疲れてインスリンの分泌が落ちてきますが、外からインスリンを注射して血糖コントロールを良くしながら、注射によって膵臓の働きを肩代わりして膵臓を休ませてあげると、インスリン分泌が復活し、インスリン注射が中止できることもあります。

ただし、長期間血糖コントロール不良の状態が続き、膵臓が疲弊して元に戻らないぐらいに傷んでしまうと回復することは難しくなります。

 

 

以前はインスリン注射というと、糖尿病治療の最後の切り札という考えがありましたが、現在は早期の段階から良好な血糖コントロールを実現するための手段として取り入れられています。インスリン注射を勧められたからといって、必ずしも重度の糖尿病とは限りません。

時期を逃さず、適切なタイミングでインスリン治療を始めることが、膵臓を長持ちさせるためにも大切だといえます。

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「ホルモン」とは、「内分泌」とは

2017.07.18

今から100年以上前に、英国の生理学者スターリング博士が、小腸で作られて血流に乗って膵臓に運ばれ、膵液の分泌を増やす働きをする物質「セクレチン」を発見しました。そして、この「セクレチン」のように「血流を介して運ばれ、離れた臓器を刺激する物質」を「ホルモン」と呼ぶことを提唱しました。

 

 

現在、体内には100種類以上のホルモンが見つかっています。そして、さまざまなホルモンが血流の中に分泌されることを、「内分泌(ないぶんぴつ・ないぶんぴ)」と呼びます。これに対し、唾液が口の中に分泌されたり、涙が目の表面に分泌されたりすることを、「外分泌」と呼びます。

 

ホルモンは、全身のさまざまな臓器で作られています(下表)。内分泌系は、外敵の攻撃や環境変化が生じたときに、情報を素早く全身の細胞・臓器に伝達し、一丸となって刺激に反応し、体内の状態を維持しようとする(ホメオスターシスといいます)ための生体防御システムと考えられます。血流を介さずに隣の細胞に直接ホルモンを分泌したり(傍分泌系;パラクライン)、自分でホルモンを受けとる場合(自己分泌系;オートクライン)もあり、それらも含めて内分泌と呼びます。

 

 

ホルモンの異常によっておきる病気を、内分泌疾患といいます。ホルモンの量がおかしくなる場合がほとんどですが、ホルモンの働きが異常になる場合もあります。ホルモンは、ごく微量で非常に狭い範囲内(基準値内)に調節されています。ホルモンの量が多すぎると機能亢進、少なすぎると機能低下になり、身体のさまざまな不調、臓器障害をきたします。ホルモン過剰の場合はホルモンの量を抑える治療(内服・注射・手術など)を、不足の場合はホルモン補充療法を行います。

 

内科や健診などの血液検査には、一部のホルモン以外、内分泌疾患の検査は含まれていないことが多く、原因がわからない体調不良が続く場合には、一度内分泌の検査を受けることをお勧めします。

 

ホルモンを作る内分泌臓器 分泌される代表的なホルモン 主な作用
下垂体 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) 副腎皮質ホルモンの分泌を促進
甲状腺刺激ホルモン(TSH) 甲状腺ホルモンの分泌を促進
成長ホルモン(GH) 成長を促進
プロラクチン(PRL) 乳汁の分泌を促進
黄体形成ホルモン(LH)

卵胞刺激ホルモン(FSH)

性ホルモンの産生を促進、女性の月経周期の調節
抗利尿ホルモン(ADH) 尿を濃くし、体内の水分を保持
甲状腺 甲状腺ホルモン 全身の代謝を促進
副甲状腺 副甲状腺ホルモン(PTH) 骨からカルシウムを血液へ放出し、血中カルシウム濃度を上昇
膵臓 インスリン 肝臓からの糖の供給を抑制、筋肉・脂肪組織での糖の利用を促進し血糖値を保持
グルカゴン 肝臓からの糖の供給を促進し、血糖値を保持
副腎 糖質コルチコイド(いわゆる副腎皮質ホルモン) 血圧・血糖値の保持、抗炎症作用など
鉱質コルチコイド(アルドステロンなど) 塩分を保持し、血圧を保持
カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど) 全身の代謝を促進

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うどん?そば?それともそうめん?

2017.07.11

当院には3名の管理栄養士がおり、いつでも栄養相談を受けて頂くことができます。

今後、ホームページでも糖尿病や生活習慣病の食事療法に関する情報を掲載していきます。

 

ぜひ、ご参考にして下さい。

 

 

 

いよいよ夏本番。あっさり・さっぱりしたものが食べたくなりますよね。

うどん・そば・そうめん。どのくらいのエネルギーがあるかご存じですか?

 

うどん(1玉) そば(1玉) そうめん(1束)
210kcal 211kcal 343kcal

 

お気づきですか?そうめんって意外にカロリーが高いのです。これは、製造過程で油が使われているから。

それならうどんかそばの方がたくさん食べられる!ではありません。たくさん食べれば、摂取エネルギーは高くなってしまいます。

工夫次第で、バランスのよい食事に変わりますよ!

たとえば、トッピングの選び方です。ついつい天ぷらやお肉を選びがちでは?

お供に稲荷寿司や炊き込みご飯を追加していませんか?

脂質の取り過ぎや糖質の重ね食べは、血糖値を乱してしまいます。

ここで野菜の登場です!

トッピングやもう一品を野菜やきのこ、大豆製品に置き換えてみてはいかがでしょう。「主食だけの食事」が「バランスの取れた食事」に近づくのではないでしょうか。

 

工夫一つで野菜摂取のチャンスをつかみましょう。

 

管理栄養士 山本

 

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なぜ糖尿病になりやすい人となりにくい人がいるのか -2型糖尿病の遺伝因子-

2017.07.04

 

日本人の糖尿病の95%を占める2型糖尿病は、食べ過ぎや運動不足などの環境因子とインスリン作用に関わる遺伝因子が複数重なり合って生じる「多因子疾患」です。同じように生活をしていても糖尿病になる人とならない人がいるのは、遺伝因子の影響です。

 

では、糖尿病の遺伝因子は何でしょうか?

 

従来、遺伝因子の解析には、病気に関与すると考えられる遺伝子の染色体上の位置を同定していく「ポジショナルクローニング」と呼ばれる方法と、病気の発症機序から関係している可能性が考えられる遺伝子(個補遺伝子)の異常を検索する「候補遺伝子解析」があり、ポジショナルクローニングは、1980年代に開発されて以降多く用いられ、パーキンソン病などをはじめ1000を超える疾患の原因遺伝子が明らかにされてきましたが、糖尿病のような多因子疾患の解析にはうまくいかないことがわかり、候補遺伝子解析によって、種々の遺伝子群と糖尿病との関連が明らかにされました。これらの遺伝子変異は、それ自体は効果の弱い遺伝子変異・多型ですが、複数の変異の組み合わせにより、効果がある一定水準(閾値)を超えたときに初めて発症に至り、その組み合わせは個人によって異なります。

 

2003年にヒトゲノム計画が終了し、全塩基配列が決定しました。その後、ゲノムワイド関連解析(GWAS: Genome-wide association study)と呼ばれる解析手法が発展しました。特定の遺伝子や狭い領域の染色体に注目する候補遺伝子解析とは逆の、ゲノム全体を見渡す手法です。

個人間における遺伝子の一つの遺伝暗号(一塩基)の違いを、SNP(スニップ;single nucleotide polymorphism:一塩基多型)といい、病気のなりやすさ(感受性)、なりにくさに影響を与える因子と考えられています。SNPはヒトの全ゲノム中に1000万種以上もあるといわれていますが、GWASは、SNPを位置マーカーとして使い、糖尿病の患者さんに高頻度に見られるSNPを見つけ出して、その近くに存在すると推測される疾患感受性遺伝子を挙げていきます。これまでに、日本をはじめ世界各国から種々の遺伝子の同定が報告されており、糖尿病発症の予防・治療につながることが期待されています。

 

また、遺伝子の塩基配列が正常でも、種々の外的要因(環境因子)によってDNAのメチル化やヒストン修飾などの遺伝子のスイッチオン・オフが起こり、インスリン分泌能などの細胞機能が後天的に変異する「エピジェネティクス(遺伝子発現制御)」も、糖尿病発症に関与している可能性が指摘されており、注目されています。

 

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