院長の糖尿病ノート

1型糖尿病の病因は

2017.08.01

1型糖尿病は、インスリンを作っている膵臓のβ細胞が、自己免疫的なメカニズムにより破壊され、インスリンを作る能力がなくなり糖尿病を発症します。

発病率には大きな地域差があり、フィンランドをはじめとする北欧諸国などに多く、中南米諸国では著しく低いことが知られています。日本における発病率は、世界の中でも低いグループに分類されています。

 

病因ですが、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも1型糖尿病の一致率が高いことから遺伝的要因が大きいと考えられます。しかしながら、その一致率が50%未満であることから、遺伝的要因に加え、環境因子の影響も加わって発症する多因子疾患であると考えられています。

 

遺伝的要因としては、白血球抗原であるHLA遺伝子の関与が強いと考えられており、日本人ではDR4、DR9のタイプの人は発症しやすく、DR2というタイプの人は発症しにくいことがわかっています。このHLAのタイプの違いが、発病率の地域差に関連していると考えられます。それ以外にも、複数の遺伝子が1型糖尿病の疾患感受性遺伝子として報告されています。

 

一方、環境因子としては、食事やウイルス、環境有害物質などがあります。1型糖尿病の多い北欧では、乳幼児期から乳製品を多く摂っており、生後早期に牛乳摂取を開始すると1型糖尿病の発症危険度が高くなるとの報告や、高率に患者の血液中にアルブミンに対する抗体が検出されることから、ウシアルブミンが自己免疫を誘導し発症の契機となる環境因子である可能性が指摘されましたが、患者と健常者との間に母乳保育の頻度に差がなかったとの報告もあり、はっきりしたことはわかっていません。また、1型糖尿病の約2割の患者さんで発症前に上気道炎症状がみられていることから、ウイルス感染が1型糖尿病の発症要因と考えられています。コクサッキーウイルスB4や流行性耳下腺炎、風疹、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどが報告されていますが、直接的な因果関係については明らかになっていません。

 

このように、1型糖尿病の原因については多くの報告・知見がありますが、いまだ不明な点も多く、「治る病気」「発症の予防」を目指して発症メカニズムの更なる解析・研究が進められています。

 

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