院長の糖尿病ノート
「ホルモン」とは、「内分泌」とは
2017.07.18
今から100年以上前に、英国の生理学者スターリング博士が、小腸で作られて血流に乗って膵臓に運ばれ、膵液の分泌を増やす働きをする物質「セクレチン」を発見しました。そして、この「セクレチン」のように「血流を介して運ばれ、離れた臓器を刺激する物質」を「ホルモン」と呼ぶことを提唱しました。
現在、体内には100種類以上のホルモンが見つかっています。そして、さまざまなホルモンが血流の中に分泌されることを、「内分泌(ないぶんぴつ・ないぶんぴ)」と呼びます。これに対し、唾液が口の中に分泌されたり、涙が目の表面に分泌されたりすることを、「外分泌」と呼びます。
ホルモンは、全身のさまざまな臓器で作られています(下表)。内分泌系は、外敵の攻撃や環境変化が生じたときに、情報を素早く全身の細胞・臓器に伝達し、一丸となって刺激に反応し、体内の状態を維持しようとする(ホメオスターシスといいます)ための生体防御システムと考えられます。血流を介さずに隣の細胞に直接ホルモンを分泌したり(傍分泌系;パラクライン)、自分でホルモンを受けとる場合(自己分泌系;オートクライン)もあり、それらも含めて内分泌と呼びます。
ホルモンの異常によっておきる病気を、内分泌疾患といいます。ホルモンの量がおかしくなる場合がほとんどですが、ホルモンの働きが異常になる場合もあります。ホルモンは、ごく微量で非常に狭い範囲内(基準値内)に調節されています。ホルモンの量が多すぎると機能亢進、少なすぎると機能低下になり、身体のさまざまな不調、臓器障害をきたします。ホルモン過剰の場合はホルモンの量を抑える治療(内服・注射・手術など)を、不足の場合はホルモン補充療法を行います。
内科や健診などの血液検査には、一部のホルモン以外、内分泌疾患の検査は含まれていないことが多く、原因がわからない体調不良が続く場合には、一度内分泌の検査を受けることをお勧めします。
ホルモンを作る内分泌臓器 | 分泌される代表的なホルモン | 主な作用 |
下垂体 | 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) | 副腎皮質ホルモンの分泌を促進 |
甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 甲状腺ホルモンの分泌を促進 | |
成長ホルモン(GH) | 成長を促進 | |
プロラクチン(PRL) | 乳汁の分泌を促進 | |
黄体形成ホルモン(LH)
卵胞刺激ホルモン(FSH) |
性ホルモンの産生を促進、女性の月経周期の調節 | |
抗利尿ホルモン(ADH) | 尿を濃くし、体内の水分を保持 | |
甲状腺 | 甲状腺ホルモン | 全身の代謝を促進 |
副甲状腺 | 副甲状腺ホルモン(PTH) | 骨からカルシウムを血液へ放出し、血中カルシウム濃度を上昇 |
膵臓 | インスリン | 肝臓からの糖の供給を抑制、筋肉・脂肪組織での糖の利用を促進し血糖値を保持 |
グルカゴン | 肝臓からの糖の供給を促進し、血糖値を保持 | |
副腎 | 糖質コルチコイド(いわゆる副腎皮質ホルモン) | 血圧・血糖値の保持、抗炎症作用など |
鉱質コルチコイド(アルドステロンなど) | 塩分を保持し、血圧を保持 | |
カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど) | 全身の代謝を促進 |