院長の糖尿病ノート
地球温暖化が糖尿病患者の増加に影響?
2017.06.19
現在の地球は過去1400年で最も暖かくなっており、最近頻繁にみられる異常高温や大雨、竜巻などの原因ともいわれています。
この地球温暖化が、世界的な糖尿病患者の増加にも影響している可能性が最近の論文で報告されました。
今回の論文によれば、気温が1度上昇すると、糖尿病の発症が1,000人当たり0.314人増加するとのことです。
その原因ですが、地球温暖化による気温の上昇により、褐色脂肪細胞の働きが低下することが影響している可能性を指摘しています。
私たちの体内に存在する脂肪細胞には、大きく分けて白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類があり、白色脂肪細胞の方が、私たちが一般的に「脂肪」と呼んでいるもので、皮下や内臓に存在し、体内の余分なエネルギーを脂肪として蓄積しています。一方、褐色脂肪細胞は、肩甲骨の周囲などに存在し、脂肪を燃焼し熱を産生する働きを担っています。この褐色脂肪細胞が多い人は、エネルギー代謝が高く、太りにくいことがわかっています。
かつては、新生児にしか褐色脂肪細胞がないと考えられていましたが、最近の研究により成人にも褐色脂肪細胞が存在することが分かり、肥満・糖尿病の予防や治療の点から注目されています。褐色脂肪細胞は、運動により増加することがわかっており、地球温暖化に個人レベルで対処することは難しいですが、運動をすることによって気温の上昇に備えることは可能ですね。
引用論文:
Lisanne L Blauw, et al.: BMJ Open Diabetes Research & Care, 20-MAR-2017
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