院長の糖尿病ノート

糖尿病の運動療法

2017.04.18

仕事はデスクワークでほぼ1日座りっぱなし、いつもエレベーターを使う、外出には、近くでもつい車を使ってしまう・・・。
このような生活では、どうしても運動不足になりがちです。

●どんな運動がいいの?
運動療法の基本は、ウオーキング、ラジオ体操、サイクリング、水泳などの有酸素運動です。
中でもウオーキングは手軽に取り組めるため、続けやすく最もお勧めです。
目安としては、週3日以上・合計150分以上(3日以上あけない)です。
また、運動開始後約20分までは、エネルギー源としてブドウ糖が消費され、それ以降は脂肪がエネルギー源として使われるため、できれば20分以上続けて運動しましょう。
時間を確保するのが難しい場合は、何度かに分けて合計30分以上確保するのでも効果は期待できます。また、食後1〜2時間がお勧めです。

 


また、ダンベルやチューブ、自分の体重などで負荷をかけて行うレジスタンス運動(筋力トレーニング)も効果的です。
特に高齢者の方は、筋肉が徐々に衰える「サルコペニア」と呼ばれる状態が心配となります。
筋肉が減ると、インスリンの効きが悪くなり(インスリン抵抗性)、糖尿病になりやすくなります。
レジスタンス運動により、筋肉を増やすと、インスリンの効きが良くなり、基礎代謝も増え、太りにくい体質になります。
有酸素運動とうまく組み合わせて行うと、ブドウ糖や脂肪を効率的に消費し、血糖値改善に一段と効果をもたらします。

 

●運動をするとどうなるの?
運動療法には、ただちに現れる効果(急性効果)と、ゆっくり現れ長期間継続する効果(慢性効果)があります。
ただちに現れる効果は、運動直後の血糖降下です。
長期間継続して現れる効果は、体重減少とインスリンが効きやすい体質になること(インスリン抵抗性の改善)です。
また、運動をすることによって、筋肉の量や筋力を維持できることにより将来寝たきりになる危険を減らし、心肺機能の維持・向上、ストレス発散などの効果も期待できます。

 

 

●運動の強さはどれくらいがいいの?
「少しきつい」程度がお勧めです。
50歳未満の患者さんは脈拍が1分間に120回、50歳以上の患者さんは1分間に100回になる程度の強さが目標です。
強度が弱すぎては運動効果が上がらず、強すぎると心臓に大きな負担がかかったり、関節などを痛めたりして危険です。
「歌は歌えないけれど、おしゃべりしながら続けられる」感覚です。

 

●注意点
合併症の状態や持病によっては運動が勧められない場合もありますので、運動を始める前に主治医と相談することが大切です。
また、運動を効果的に安全に行うためには、どんな種類の運動を、どれくらいの強さで、週何回ぐらい行うかが重要ですので、これも主治医に相談して下さい。
薬物療法を併用している場合は、運動中・運動後だけでなく予想外の時間に低血糖を起こす可能性があるので注意が必要です。
必ずブドウ糖を持ち歩くようにしましょう。運動療法も、食事療法と同様に、無理をせず、継続していけるように日常生活の中に取り入れていくことがポイントです。
自分に合った運動メニューを考えましょう。
また、「エレベーターより階段を使う」、「ちょっとした距離なら歩いて行く」など、日常生活の中でも身体を動かすことを意識して下さい。

 

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